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Small talk ~紡ぐ~

2026年8月19日

【第2章】成果指標に届かなくても失敗にならない設計

成果連動型のいちばん怖いところ

SIBの仕組みには、正直に言って、怖いところがあります。「成果が出なかったら、どうなるのか」です。半年間、受講生10人が学んだ時間は。伴走したメンターの労力は。集まった資金は。それらは、成果指標が目標に届かなかった瞬間に、なかったことになるのか。私はこの問いに答えられないうちは、自分から成果連動型を提案する気になれませんでした。だから島根県との3年間の議論で、いちばん時間をかけたのがここです。

結論から言います。この事業では、成果が出なかったからといって、お金が「消える」ことがありません。行き先が、はじめから当事者だからです。
まず、お金の行き先を全部お見せします事業全体の総額は1,750万円で、内訳は以下のとおりです。

総事業費支出内訳

そして、現在エントライで個人・法人の皆様から募集している800万円——「訓練費」の中身が以下の通りです。

匿名組合出資金内訳


いちばん下の587万円。これが、受講生本人が有償OJTで働いた時間に対して支払われる報酬です。訓練費800万円の約73%を占めます。
残りの213万円(約27%)は、メンターとトレーナーの人件費。そして、このメンターとトレーナーは、全員がRobo Co-opの過去の卒業生です。かつて自分が支援を受け、学び、壁を越えてきた人たちが、今度は教える側に回っています。
つまり訓練費800万円は、受講生への報酬(587万円)と、卒業生への報酬(213万円)の合計です。外部の講師費用は、この事業に一円も入っていません。さらに、受講生10名のうち3名には生活支援費を20万円×3ヶ月/1名支給します。

ここで、あえて自分たちに厳しい計算をします。
当事者本人に直接渡るお金は:

 – 生活支援費 180万円
 – インターン報酬 587万円
 – 合計 767万円(総事業費1,750万円の44%、1人あたり約77万円)

メンター・トレーナー費213万円は、全員が卒業生なので、これも当事者コミュニティへの還流です。加えると:980万円(56%)。「1,750万円すべてが当事者の価値になります」とは言いません。
残りの44%の内訳を、正直に見ていきます。

 – 租税155.5万円は、どの事業形態を選んでも必ず発生します。
 – その他運営費165.3万円には、第三者によるインパクト評価の費用が含まれています。これは成果連動型事業として説明責任を果たすためのコストで、削れば信頼性が落ちます。
 – インパクト投資家リターン40万円は、リスクを引き受けてくださった出資者への対価です。

この3つ、合計360.8万円は、「無駄になったお金」ではありません。成果連動という仕組みを選んだ以上、必ず発生する費用です。
この3つを外して、残りの1,389.2万円を分母に計算し直すと、見え方が変わります。

– 当事者への直接還元(767万円)は、約55%
– 卒業生への還元も含めると(980万円)、約71%
– 残る管理費(プロジェクトマネジメント費259.2万円+スキーム組成費150万円、合計409.2万円)は、約29%——3割弱

「配分先を選べるお金」のうち、7割以上が、受講生本人か、かつて受講生だった人に向かっています。

もう一点、比較の視点も付け加えます。多くの人材育成・就労支援プログラムでは、受講中に生活費や労働の対価そのものが本人に直接支払われる設計は、実はそれほど多くありません。第7回で紹介する米国のキャリアインパクトボンドも、学費の立て替えが中心で、学習期間中に時給や生活費が本人に支払われる仕組みではありませんでした。「事業費のほぼ半分が、普通なら受講生に届かない形で届いている」こと自体が、この設計の特徴です。

だから、私たちはまず「100%」ではなく「56%」と言います。そのうえで、必要経費を除いた実質ベースでは「7割以上」だと、根拠を示して言います。そのほうが、遥かに信頼に値する数字だと思うからです。

成果指標に届かなかったとき、何が起きるのか

この事業の成果指標は2つです。
成果指標1:座学 研修修了率— 所定カリキュラムの受講と3つの最終演習の提出を完了した人数。目標は最低80%以上。
-成果指標2:有償OJT修了率— OJT案件に最後まで参加した人数。週報の内容も踏まえて判断。目標は最低60%以上。

もし、この目標に届かなかったら。自治体から支払われる訓練費は少なくなり、出資者への分配も相応に減ります。でも、そのときでも、次のことは変わりません。

1. 働いた時間分の報酬は、その人に支払われます
有償OJTは時給制です。1時間1,500円で、実際に働いた時間に対して支払われます。
「OJTを最後までやり遂げた」という成果指標の判定に届かなかった場合でも、その人が実際に働いた時間分の賃金は、その人に支払われます。途中で離脱せざるを得なかった人からお金を取り戻す、というようなことはしません。
成果指標は、自治体が支払うかどうかを判定する基準であって、当事者が受け取った報酬を取り消す基準ではないのです。ここが、この設計のいちばん大事な部分です。

2. 生活支援費は、あえて成果指標の対象から外してあります
受講生10名のうち3名に、月20万円を3ヶ月間。合計180万円。就労に困難を抱える方の中には、生活費や育児・介護の事情で、学びたくても時間を確保できない方が少なくありません。生活支援費は、その負担を減らし、安心して学習とOJTに取り組める環境をつくるためのものです。
これは、意図的に成果連動の対象から外しています。生活の土台が成果次第で揺らぐようでは、そもそも集中して学ぶことができません。学ぶための環境は、結果ではなく前提として先に置いておく必要がある——そう考えて設計しました。だから、この180万円は座学修了率やOJT修了率がどうであれ、必ず本人に届きます。

3. スキルと、ポートフォリオと、仲間が残ります
生成AIの活用、AIエージェントの構築、RPAによる業務自動化。これらは、修了証が出るかどうかとは無関係に、身についたら本人のものです。有償OJTで実案件に関わった経験と、そこでつくった成果物(ポートフォリオ)も、そのまま次の就職活動に使えます。
そして、5人1組のグループ学習で半年間支え合った仲間。24時間質問できるAIチューター、週2回のオフィスアワー、月次の1on1。この環境の中で「自分にもできる」と思えた経験は、数字では測れませんが、たぶんいちばん長く残ります。


実施主体がRobo Co-opであることの意味

もうひとつ、この「失敗しても失敗にならない」構造を支えているのが、実施主体そのものです。
運営側が卒業生です。メンターもトレーナーも、かつて支援を受けた側でした。だから事業費が支援対象のコミュニティに還流します。外部から講師を呼んでくる形だと、この還流は起きません。

OJTの受け皿を自社で持っています。万が一、企業側の受け入れ先確保が思うように進まなかった場合に備えて、Robo Co-opが受注しているAI開発案件や研修伴走案件もOJT対象として確保しています。「研修は終わったけれど、実務の場がない」という、就労支援でもっとも起きやすい断絶を、構造的に潰しています。

海士町での既存業務があります。島根県海士町との包括連携により、育成した人材が地域で働き続けるための受け皿が、すでに動いています。

正規雇用メンバーの定着率は100%です。これまでRobo Co-opの支援を通じて正規雇用に至ったメンバーは、全員が定着しています。

そして、名前そのものにも意味があります。「Co-op」は、協同組合(cooperative)の略です。協同組合の原則は、外部の株主のために利益を上げることではなく、そこに関わる当事者自身が出資し、運営し、利益と責任を分かち合うことにあります。

今回の仕組みを指す「ボンド(Bond)」という言葉も、金融の世界では「債券」ですが、元々の意味は「絆」「結びつき」です。
コープ(支え合う結びつき)と、ボンド(絆・契約)。この事業は、たまたまその両方の意味が重なる場所に立っています。成果に応じて資金が動く金融の仕組みであると同時に、当事者同士が支え合う協同の実践でもある。どちらかだけでは、この設計は成立しません。

ここまで「失敗しても価値が残る」という話をしてきました。ただし、これは当事者に移転した価値の話であって、出資者の元本の話ではありません。
この2つは、はっきり分けて理解していただく必要があります。毀損しうるのは財務リターンであって、当事者に移転した人的資本ではない。
出資してくださる方にとっては、成果指標が未達の場合、分配が出資額を下回る可能性があります。これは実際のリスクです。営業者であるRobo Co-opの財務状況を含む信用リスクもあります。
これらのリスクについては、必ず取扱者であるプラスソーシャルインベストメント株式会社の運営するエントライで、契約締結前交付書面(匿名組合契約説明書)を含めてご確認ください。私たちの言葉での要約ではなく、正式な開示資料でご判断いただきたいと思っています。

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