2026年8月19日
【第5章】お試しできる人材、お試しできる技術 企業にとっての島根県SIB
※企業のみなさま向けです。
この回だけ、読者が違います。これまでの4回は、この仕組みに関心を持ってくださる市民の方や、出資を検討してくださる方に向けて書いてきました。今回だけは、企業の経営者・人事・DX担当の方に向けて書きます。単独で読んでいただいて構いません。
お伝えしたいことはシンプルです。このプロジェクトは、企業にとって「低リスクで人材と技術を試せる機会」です。そしてそれは、慈善ではなく、事業判断として合理的だと思っています。
インパクトソーシングという考え方
インパクトソーシング(Impact Sourcing)という言葉があります。就労機会にアクセスしづらい人々を、業務の委託先として意図的に選ぶ調達の考え方です。
CSRの文脈で語られることが多いのですが、私はもっと即物的な利点があると思っています。
採用は、リスクの高い意思決定です。
正社員を1人採用すれば、教育コストを含めて年間数百万円の投資になります。それでいて、実際に自社の業務に合うかどうかは、働いてもらうまでわからない。特にAI・DX人材は市場が過熱していて、採用単価は上がる一方です。
一方で、業務の側にも不確実性があります。「AIで自動化できそうな業務」があったとして、本当に自動化できるのか、どのくらい工数が浮くのかは、やってみないとわかりません。外部ベンダーに数百万円の見積もりを取る前に、小さく試したい。そう思っている企業は多いはずです。
人材の不確実性と、技術の不確実性。この2つを同時に、小さく試せる場が、このプロジェクトです。
この違いを、もう少し構造的に言うと、こうなります。
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インパクトソーシング(業務委託) |
インパクトハイアリング(直接雇用) |
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コスト区分 |
変動費 |
固定費 |
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発注のしやすさ |
不景気でも可能 |
好景気なら可能 |
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得られるもの |
お試し機会 |
安定的な就労機会 |
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管理の負担 |
ベンダー側が管理 |
自社で管理 |
正社員として直接雇用するのは、いわば「安定的な就労機会」を作る動きで、固定費が発生し、好景気でなければ踏み出しにくい判断です。一方、Robo Co-opのような団体に業務委託する形(インパクトソーシング)は、変動費として扱えるので、不景気の時期でも「まずは小さく試す」という判断がしやすい。しかも言語の壁や管理コストは、ベンダー側であるRobo Co-opが引き受けます。
今回の有償OJTの受け入れは、まさにこの「お試し機会」そのものです。直接雇用の判断をする前に、まず業務委託の形で人と技術を試せる——それが、企業側から見たこの仕組みの実質です。
具体的に、何ができるのか
1. 有償OJTの受け入れ
このプロジェクトでは、10名の受講生が約3ヶ月の座学のあと、約3ヶ月の有償OJTに入ります。
OJTの受け入れ先は、島根県内のデジタル人材不足の解決に寄与するため、県内企業を中心に計画しています。
受け入れていただく業務は、AI・RPAによる業務自動化案件、AI/RPA研修の伴走案件などです。
プロジェクトマネージャーとトレーナーが伴走するので、企業側が育成の全責任を負う形にはなりません。
「うちの業務でAIが使えるのか」を、実際の人と一緒に確かめられる——それがこの機会の実質です。
2. 投資家特典としてのトライアル
本ファンドに出資いただいた方には、以下の特典が想定されています(内容は変更となる場合があります)。
– 2万円以上 — Robo Co-op卒業生とのカジュアル面談(税込2,000円相当)
-50万円以上— 無料AIコンサルティング(1時間)+卒業生とのカジュアル面談(税込50,000円相当)
-100万円以 — 上記+AIタレント(卒業生)の1ヶ月無料トライアル(税込200,000円相当)
100万円の出資に対して、AI人材の1ヶ月トライアルが付く。
ここで実際の業務を任せてみて、成果を確認したうえで、その先の関係を考えていただけます。
なお、出資である以上、成果指標の達成状況によっては元本が毀損する可能性があります。
特典の有無とは別に、金融商品としてのリスクがあることは必ずご確認ください(詳細はエントライをご確認ください)。
3. 企業版ふるさと納税
出資とは別の関わり方として、企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)を通じた寄付があります。
税額控除と損金算入を合わせると、実質的な負担は大きく軽減されます。
制度上、最大で寄付額の約9割に相当する軽減効果が見込めるとされています(具体的な控除額は貴社の状況によって異なりますので、必ず顧問税理士にご確認ください)。
こちらは金融商品ではなく寄付ですので、リターンを求める性質のものではありません。地方創生への貢献を、税制上の優遇を受けながら実行するという位置づけになります。
もうひとつのリターン:AI活用の「型」が学べる
ここからが、実は私がいちばんお伝えしたい部分です。
このプロジェクトでは、受講生の実務にRobo Co-opが自社開発したAIソリューションを使います。
– Robo Finder — 業務の中から、自動化に向いている工程を選び出すAI
– Robo Builder — 選定された業務の自動化を、実際に構築していくAI
なぜこれが企業にとって価値があるのか。
AI導入で企業がいちばんつまずくのは、「どの業務にAIを使うか」の選定だからです。
ツールは無数にあります。研修も受けられます。それでも、自社のどの業務が自動化に適していて、どこから手を付けるべきかを見極める部分で、多くのプロジェクトが止まります。
Robo Finderは、まさにその工程を型にしたものです。そして受講生たちは、この型を使って実際の業務を分析し、要件を定義し、開発し、テストしていきます。
その現場に立ち会っていただくということは、「AIを活用した価値の作り方」そのものを、自社に持ち帰れるということです。
人材を試せる。技術を試せる。そして、AI活用の方法論を学べる。この3つが同時に手に入るのが、このプロジェクトの企業側から見た構造です。
Robo Co-opという事業者について
「就労困難者の支援団体」と聞くと、実務レベルはどうなのかと思われるかもしれません。率直に、実績でお答えします。
– 自治体・上場企業・国際機関向けに、AI研修・DX伴走サービスを提供してきた実績があります。
LOGISTEED、AEON、JTといった大手企業、UNHCR、島根県海士町など、幅広なクライアントを支援してきました。– Googleとアジア開発銀行(ADB)のAIトレーニング戦略パートナーに選出されています。
AVPNとGoogle.orgが発表した、アジア太平洋地域のAI人材育成に向けた1,500万ドル規模の基金の戦略パートナーの一つです。– UNHCR公認の取り組みとして評価を受けています。
2026年には、UNHCRの「Advisory Board of Organizations Led by Forcibly Displaced and Stateless Persons」にも名を連ねています。– 受賞歴は、2025年の国連創設80周年総会でのSDGs Innovation賞、Forbes Japan Next Generation Impact Startup 30、Fast Company’s World Changing Ideas Awards、Business Insider Japan BEYOND MILLENIALS 2025 Entrepreneur & Changemaker Award、2023年の国連World Summit Award(UN)など、多数にわたります。
– 支援を通じた正規雇用メンバーの定着率は100%です。

具体的な実務の例も、2つ挙げます。
物流大手のLOGISTEEDとは、DX民主化に向けたCoE(Center of Excellence)の組織改善・AI活用提言を実施し、12ヵ月で43件の業務自動化開発を支援しました。
複数社の路線便物量報告、人事決済システムのダウンロード編集、着荷確認の自動化など、現場レベルの改善を積み重ねる形です。
そして、Robo Co-opの難民メンバーが、国連職員向けにAI研修を提供したこともあります。
支援を受ける側から、国際機関の職員に教える側へ。これがRobo Co-opの育成レベルの、ひとつの証明だと思っています。
さらに、Robo Co-opは「Global Impact Sourcing Consortium」という、より大きな枠組みの一員でもあります。
外務省・日本経済団体連合会・新経済連盟がSponsorに名を連ね、UNHCRとWelcome Japanが中心となって、10億円規模の基金組成と100億円規模の案件創出を目指す取り組みです。
島根県SIBは、この大きな流れの中の、島根での実践のひとつという位置づけでもあります。
そして卒業生たちの実際の姿を、少しだけ。
シングルマザーとして子育てと介護を抱えながら、子どもが寝静まった後の時間で学習を続けた方は、いまRPA・生成AI案件と研修案件に携わり、自身の経験を次の支援へとつないでいます。
ミャンマーの紛争下で、夜は真っ暗な環境の中で学び続けた方は、シリコンバレー企業のAI案件や日本企業の開発案件に参画し、高度人材ビザを取得して、日本で新たなキャリアを歩み始めました。
多様な背景を持つことと、実務で通用することは、まったく矛盾しません。むしろ、時間や場所の制約がある中で学びきった人たちの粘り強さは、実務で強く出ます。
島根県内の企業に限らず、ご相談をお受けしています
なお、この座組みは島根県のプロジェクトですが、Robo Co-opとしてのAI研修・DX伴走・業務自動化のご相談は、地域を問わずお受けしています。
「まずは自社の業務を棚卸ししてみたい」「AI導入の第一歩をどこから始めるべきか相談したい」といった段階からで構いません。
最後に
企業のみなさまにとって、この関わり方には目的が2つあることを、あえて隠さずに書きます。
ひとつは、貴社にとってのメリット。人材と技術を低リスクで試せて、AI活用の型が学べる。
もうひとつは、私たちにとってのメリット。OJTの受け入れ先が広がることが、この事業の成果指標の達成に直結します。受講生が実務経験を積める場が増えるほど、修了率は上がり、就労につながる確率も上がります。
つまり、貴社が得をすることと、10名の受講生の人生が変わることが、同じ方向を向いているということです。
私はこの構造を、恥ずかしいこととは思っていません。むしろ、こういう構造でなければ続かないと思っています。
善意だけで回る仕組みは、善意が尽きたときに止まってしまうからです。
ご関心をお持ちいただけましたら、ぜひお声がけください。
【島根県SIB 誰もがデジタルで自立する教育就労支援ファンド】
出資募集は2026年8月31日まで。出資に関する詳細・出資申込はこちら